機能回復修理・レストア

レンズの組み立て
レンズの修理と一口で言っても様々な内容があります。その中でも特に重要な最終的な組み立て行程について書きたいと思います。

レンズのキズや劣化などで研磨を必要とする場合、キズの深さ等にもよりますが完全にキズを消すまで研磨するとオリジナルの状態から外れ、性能自体を悪化させてしまいます。綺麗にするだけであればどんどん磨いてしまうことで出来ますが、撮影を目的としている場合には研磨のしずぎは良くありません。また、研磨したレンズを組み立てる場合には、程度の差こそあれ研磨したのですから精度を完全に出し直さなくてはなりません。
さて、その組み立て方ですが、沢山の測定器と時間を必要とします。通 常コリメーターでピントは出せますが、ピント精度だけでは話しになりません。とりあえず仮組みし無限でピントを合わせ、MTF(写 真1)で測定します。この時点では片ボケやコントラストの不足など、様々な問題が発生します。これを調整し、再度MTFで測定します。これを何回か繰り返していきます。ある程度数値が出たところで投影(写 真2)に入ります。ここで調べることは、やはり片ボケや解像度、RGB分けしたときのズレなどを確認します。もちろんこの時点でも調整を進めます。レンズによってはベンチコリメータ(写 真3)を使う場合もあります。これらの行程が終わり、組み立てを終わらせて、再度検査を行います。この検査に受かれば外観を清掃して終了ですが、検査に落ちればもう一度最初からの手順て組み立てを行います。


写真1 MTF測定器

写真2 投影

写真3 ベンチコリメーター
組み立てる前提として大事なことがあります。通 常のレンズで言うヘリコイドです。研磨を行ってもヘリコイドがきちんとしていなければすぐに精度が狂います。「スカスカではない」とか「重すぎない」とかいった感覚だけでは判断できません。研磨を行うような状態のレンズであればヘリコイドもオーバーホール(OH)が必要です。ヘリコイドが調整された上で、はじめて組み立て時の調整が可能となってくるのです。
結論
Lens Repair
研磨したから良く写 るとかグリスを入れ替えたからどうだとか、そういった個別 の作業だけではレンズの性能は発揮できません。もちろん研磨等の技術も重要ですが、作業するのであれば個別 には出来て当たり前。問題は一つ一つの作業を活かすための組み立てができるかどうかです。また性能は目で見てわかるとか感触でわかるとか経験だけでわかるものでもありません。各種測定器を使用し、その測定器の維持管理まで神経を使い、組み立て(レンズの組み込みは特に)でその測定器を活用し、初めて性能を発揮できるのです。